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コンパクトディスク
音楽の販売形態でデータ配信という形が一般的になってきた昨今、ふと思った。
いずれCDは廃れて無くなってしまうのだろうか、と。

というかそもそも音楽の配信がどうのというより、記憶媒体として、CD・DVDの類はよりコンパクトでより容量の大きい物(既にUSBメモリとかあるけど)に取って代わられるのだろうなあ、当たり前の話だけど。
LPレコードなんかと違って、CD・DVDはレトロなコレクターズアイテムとしても成立しなさそうだしなあ。
あのキラキラ光ってるのがヘンに未来っぽいのだよな。
そのキラキラしてるの活かしてカラス除けとして生き残るしかないか。
あとはお医者さんごっこの時、医者が頭に装着する中心に穴の開いた鏡の代わりに使うぐらいか。最近の医者は額帯鏡なぞ使わないけど。

ともあれかくあれ、CDが無くなった未来を想像してみた。

どこまでも高く澄んだ青空。
どこまでも広がる水田。
青々とした稲の先に見えるのは、夏にふさわしく緑の木々でこんもりと盛り上がった山々だけだ。
稲作の盛んな東北地方ではごくごく当たり前の風景である。
だが、都会の小学生の太郎には全てが初めて見るものばかりだ。目を輝かせ半ば走るようにしてあぜ道を進んでいく太郎。
そんな孫の様子を目を細めて見守る久義。
陽光にきらめく田んぼの水面、だがそれよりも一際強く輝く物体が太郎の目を引いた。
虹色に輝く円盤状の物体。その物体は、中央に開いた穴から紐が通され、地面に突き立てられた棒の先にぶら下げられていた。大きさは12センチほどだろうか。
「おじいちゃん、あれ何?あの丸いピカピカしたやつ」
「おお、あれか。あれはなCDといってな、昔の人はあれに写真や音楽を入れていたんだよ」
既にCD・DVDが記憶媒体として使われなくなって久しい。小学生の太郎が知らないのも無理はない話だ。
「へー、じゃあこの中にも写真とか音楽とか入ってるんだ」
「そうだよ、この中にはおじいちゃんの思い出が沢山詰まってるんだぞ」
「えー、見たい!見たい!」
「ははっ、それは無理だよ。もう、これを見る機械自体がないからね」
そう語る久義の脳裡に若い頃の思い出がまさしく走馬灯の様に流れていく。
思い返せば、幸せ、だったのだなと久義は思った。
人を恨んだことがあった。
世を呪ったことがあった。
だが、それ以上に愛し愛された人生であった。
良かった。
良かった。生きてきて良かった。
棒の先にぶら下がったCDを不思議そうに眺める太郎を見ながら、久義はそう思うのであった。

そんなおじいちゃんの思い出が詰まったCD、プライスレス。


中身、おじいちゃん秘蔵のエロ動画だけど。